「見捨てられ不安」が招く悲劇
愛する人や大切な人との関係で、なぜかいつも同じような悩みを抱えてしまう。それはもしかしたら、心の奥底に潜む「見捨てられ不安」が原因かもしれません。
この見捨てられ不安は、ときに私たち自身を、そして大切な人との関係を深い悲劇へと導いてしまうことがあります。
この記事では、「見捨てられ不安」がどのように生じ、それが人間関係、特に恋愛や夫婦関係にどのような影響を与えるのか、そして「回避依存症」という形での現れ方について詳しく解説します。
目次
見捨てられ不安とは?
見捨てられ不安とは、愛する人や大切な人から見捨てられること、拒絶されること、あるいは関係が終わってしまうことに対して抱く強い恐怖や不安のことです。
この不安は、多くの場合、幼少期の親子関係における体験が原因となって形成されます。
例えば、「良い子でいないと愛されない」「完璧でないと受け入れてもらえない」といった条件付きの愛情で育てられた場合、子どもは常に相手の顔色をうかがい、嫌われることを極度に恐れるようになります。
そのため、大人になってからも、些細な出来事やパートナー(夫や妻)のちょっとした言動や行動の変化に対しても、「もう愛されていないのではないか」「この人も自分から離れていくのではないか」と過度に不安になってしまうのです。
この根深い不安は、その後の恋愛関係や夫婦関係において、さまざまな問題行動として現れることがあります。
その一つが浮気(不倫)です(以下記載)。
「見捨てられ不安」もやはり親が原因
生まれた瞬間に、「自分はダメな人間だ」「価値のない人間だ」と思って生まれてくる赤ちゃんは一人もいません。
私たちは、乳児期、幼少期を経て成長する中で、少しずつ自己肯定感を低下させていきます。
そして、その過程で最も身近にいる存在が親です。
幼い子どもは親なしでは生きていけません。
衣食住をはじめ、あらゆる面で親に頼らざるを得ません。
親がその立場を利用して、しつけの名目で「いい子にしなかったらこの家から出ていきなさい」「あなたはうちの子じゃありません」といった言葉を投げかけることがあります。
乳幼児期は、母親(主要な養育者)への基本的な信頼感や安心感を確立する非常に大切な時期です。
無条件の愛情とスキンシップが不可欠です。
幼稚園や保育園などで親と一時的に離れるわずかな時間でさえ、この時期の子どもにとっては大きなストレスとなります。
そんな中で上記のような言葉を投げかけられたら、親に安心感を得ることは極めて困難でしょう。
この時期に生じた見捨てられ不安が、成人してからの人間関係に大きな影響を及ぼすのです。
当時の記憶や感情は、潜在意識に深く刷り込まれています。
過去の事実を書き換えることはできませんが、過去に対する考え方、感じ方、そして受け止め方を変えることは可能です。
安心してください。
いつも浮気(不倫)してしまう人-なぜ浮気(不倫)してしまうのか-
「いつも自分が浮気(不倫)をして関係が終わってしまいます…いつも同じことを繰り返してしまいます」
というご相談があります。
※このページの「いつも浮気(不倫)してしまう人」というのは、主に「浮気(不倫)を本当はしたくないのにしてしまう人」について書いています。罪悪感なく積極的能動的に浮気(不倫)をする人について書いているわけではありません。
共依存やアダルトチルドレンの特徴の一つに、「見捨てられ不安」がありますが、それが浮気(不倫)に走る原因の一つと考えられます。
見捨てられ不安によって、
「いい人」でいないとパートナー(夫や妻)に嫌われてしまうのではないか、
いつかこの人も自分から離れていってしまうのではないか、
いつか相手の自分を求める気持ちが薄れていってしまうのではないか、
のような怯えが生まれます。
条件付きの愛情で育てられたために安心感を保つこと、感じることができないのです。
<関連ページ>条件付きの愛情について記載しています↓
付き合いが長くなるにつれ、当初の燃え上がるような気持ちは薄れていくと思います。
恋から愛に移行していきます。
これは健全な移行です。
ただし見捨てられ不安を抱えている人は、ずっと自分への燃え上がる気持ちをパートナーに保ち続けてもらわないと極度の不安に陥ります。
人間誰しも四六時中お互いにお互いを思い続けることなんて不可能ですよね。
なんとなく素っ気ない時もあるでしょう。
家に帰っても仕事のことで頭がいっぱい、なんてこともあるでしょう。
ただ疲れているだけかもしれません。
しかし、見捨てられ不安を抱えた人は、そういった事情を考慮せず、ちょっとした些細なことですべてを拒否された気持ちになってしまうのです。
それは潜在意識で、「こんなに長く幸せが続くわけがない」と思っている、ということも原因の一つです。
(「幸せのアッパーリミット」と呼ばれています。自分で幸せに上限をつけてしまうのですね)
機能不全家族で育った結果生まれた無意識の信念とも言えるでしょう。
そのため、不幸に戻るための材料を無意識で探してしまうのです。
そういった目でパートナーを見ていれば、必然的に「パートナーは自分を愛していないのではないか」という材料はたくさん見つかります。
人は自分の信念に合うように物事を見るからです。
こうして、嫌われる前に、傷つく前に、自分から離れてしまおう、他の人の所に行ってしまおう、となり、浮気(不倫)という結果になるのです。
本当は今のパートナーに充分に愛されているにもかかわらず、自分で勝手に「愛されていない、嫌われている」と判断してしまっていることも多いです。
これらは回避依存症の方の傾向でもあります(下に特徴について記載あり)。
一回一回の恋愛や結婚の期間が短期間であることが多いです。
なぜ弱い人とズルい人は結びつくのか | |
浮気(不倫)をする方というのは、自己肯定感が低い方が多いです。 |
根底に見捨てられ不安がある方は、結果として恋愛・結婚が途切れず、一人になる機会がなかなか訪れないことがあります。
常に誰かに満たしてもらっている状態が続き、自分と向き合う必要のない状態のまま歳を重ねていきます。
歳を重ねれば重ねる程、自分と向き合い、改善することが難しくなります。
そういう意味で、変にモテてしまう方は不幸な面があります(変にモテてしまう方、というのは、別れたらすぐに他の誰かに付き合おうと言い寄られる方、既にパートナーがいる方(既婚者等)ばかりに言い寄られる方、自分から言い寄ればすぐにOKしてもらえる方、等のことです)。
自分と向き合う機会が訪れない、という面で不幸なのです。
また、自分に見捨てられ不安があることに気付かず、誰かに満たしてもらっている状態を、自分で自分を満たせていると勘違いし、自己肯定感が高いと思っている方もいます。
どうも恋愛や結婚がいつも上手くいかないという方は、一度一人になる時間を意識して作った方が良いと思います。
そういった勘違いに気付ける時間を設けた方が良いです。
このような、自分に見捨てられ不安があることに気付かない方は、上に書いたような、変にモテてしまう方に多いです。
いずれにしても、一人でいられる自分になることです。
そして健全な恋愛・結婚をできる自分になることです。
いつも浮気(不倫)されてしまう人-なぜ浮気(不倫)されてしまうのか-
一方で、いつも浮気(不倫)をされて関係が終わってしまう、というご相談もあります。
これも潜在意識で、「こんなに長く幸せが続くわけがない」と思っていることが原因の一つです。
いつも浮気(不倫)してしまう人と根底は同じなのです。
「浮気(不倫)しているのではないか」という目でパートナーを見るため、必然的に証拠(のようなもの)はたくさん見つかります。
人は自分の信念に合うように物事を見るからです。
そのため、それが本当に浮気(不倫)の証拠なのかどうかは注意して判断する必要があります。
勝手に証拠として見てしまっている可能性があることは頭に入れておいてください。
もし浮気(不倫)がなかった場合、疑われたパートナーは気分を害します。
そこから関係がギクシャクしてしまいます。
このような人はパートナーに対して、自分のことが好きかどうかが心配で試し行動をする傾向にあります。
試されるってパートナーからしたら不愉快ですよね?
試されてるなっていうのは相手はわかるものです。
信頼されていないな、と思うものです。
そういうことが続くとパートナーの心が離れていくきっかけになってしまいます。
「不安なのだから仕方ないじゃないですか!」
確かにそうです。
「浮気されました、もう本当に最悪ですよね!」
おっしゃることはよくわかります。
どんなことがあっても浮気(不倫)して良い理由にはなりません。
ですが、いつも浮気(不倫)をされてしまうということがなぜ繰り返されるのか。
パートナーが他の人に替わってもなぜ繰り返されるのか。
どこかで自分に目を向けていただきたいのです。
浮気(不倫)されやすい人の特徴 | |
結論から言うと、浮気(不倫)されやすい人の特徴は、パートナーのお母さん役・お父さん役になりがちな人です。 マネージャーのような人とも言えます。 |
回避依存症の深い理解:見捨てられ不安からの防御
あなたのパートナーは、距離を縮めようとすると離れていく傾向にありませんか?
もし当てはまるなら、それは回避依存症の可能性を示唆しています。
回避依存症の主な特徴
回避依存症の人は、以下のような特徴を持つことが多いです。
親密さの回避: 深い人間関係や感情的な繋がりを避ける傾向があります。親密な関係を持とうとすると、それを「重荷」と感じてしまうことがあります。
愛情表現の乏しさ: 本当に自分に好意を持っているのか疑問に思うほど、愛情表現が乏しいのが特徴です。
パーソナルスペースの侵害への過敏さ: 機能不全家族で育ち、自分のパーソナルスペース(精神的な領域)を守ることができなかった人に多い傾向があります。そのため、ほんの些細なことでも自分への攻撃や侵入と捉えてしまいます。
「助けを借りる」ことへの抵抗: 他の誰かを頼ろうとはしません。自立心が非常に強く見えますが、これは「弱さを見せたくない」「依存することで傷つくことを避けたい」という心理の裏返しです。
回避依存症の根底にある「見捨てられ不安」
共依存的な人は、自分を必要として欲しいために過度に世話を焼いてしまいがちです。
しかし、回避依存症の人は、そうした「尽くされる」ことすら重荷に感じ、距離を取ろうとします。
なぜなら、回避依存症の人の根底には、「本当の自分を知られたら嫌われる」という強い「見捨てられ不安」が潜んでいるからです。
この根底にある感情を理解しておかないと、共依存的な傾向のあるパートナーは、相手の愛情表現の乏しさに物足りなさを感じ、どんどん「侵入」していきたくなります。
好意を受け取ってもらえない不安から、さらに好意を与え続け、そのために距離が縮まるどころか、ますます離れていってしまうという悪循環(負のループ)に陥りやすいため注意が必要です。
回避依存症と浮気(不倫)の関係
前述の「いつも浮気(不倫)してしまう人」の項目でも触れましたが、回避依存症の人は、自分が傷つく前に離れようとする傾向があります。
回避依存症の人がなぜ浮気(不倫)をするのかというと、他に恋人を作ることで、一つの関係に集中する親密さを分散するためです。
複数の関係を持つことで、特定の誰かに深く依存したり、深く傷つくリスクを避けようとします。
この傾向は、交友関係が広く浅いという特徴にも現れます。
回避依存症のパートナーとの関わり方
納得ができないかもしれませんが、回避依存症のパートナーと健全な関係を築いていくためには、「適切な距離」を見つけることが極めて重要になります。
彼らの心理を理解し、彼らのペースを尊重しながら、安心できる関係性を時間をかけて築いていく必要があります。
<関連ページ>愛着障害と共依存
自己肯定感の向上こそが解決の鍵
見捨てられ不安は、言い換えれば自己否定感です。
結局、すべての問題はそこに帰結します。
健全な人間関係を築くためには、自己肯定感を向上させることが不可欠です。
自己肯定感が低いからこそ、健全な人にとっては取るに足らない些細なことも、自分を攻撃する大きな出来事として捉えてしまうのです。
繰り返しますが、「自分は価値のない人間だ」「生まれてくるべきではない人間だ」と、最初から(生まれた瞬間から)既に思って生まれてくる人はいません。
自己肯定感は、人生の過程で徐々に低下していくものです。
<関連ページ> 共依存脱却の教科書
いずれにしても、一人でいられる自分になることです。
そして、健全な恋愛や結婚ができる自分になることが、見捨てられ不安という悲劇を乗り越えるための道となるでしょう。
この記事を書いた人 | |
共依存・夫婦問題カウンセラー大村祐輔 9年間で約800人、60分×約13,000回のカウンセリング実績から得た知識や経験を還元できるよう日々尽力しています。 大村の理念は「夫婦問題を解決して終わりじゃない」「離婚して終わりじゃない」「根本からの自己改革」です。 共依存で悩むあなたに「とことん付き合う」の精神で活動しています。 日本学術会議協力学術研究団体 メンタルケア学術学会認定 メンタルケア心理士 資格番号E1607030023 一般社団法人 ハッピーライフカウンセリング協会認定 離婚カウンセラー 会員番号200017 →詳しいプロフィールはこちら |