家族の中で背負わされた”無意識の役割”-アダルトチルドレンが抱える機能不全家族の呪縛
機能不全家族とは
機能不全家族とは、家族が本来持っているはずの、お互いを支え合い、成長を助け合う機能が上手く働いていない家族のことです。
機能不全の家庭では、健全な家庭では当たり前に存在する心の安全基地を築くことができません。
自己肯定感を育てることができず、人間関係で問題を抱えたり、感情のコントロールが難しくなったり、認知のゆがみを生じさせてしまったり、共依存やアダルトチルドレンの特徴を作り出す家族のことです。
今でこそ、SNS等で他の家族の様子を見る機会が増え、自分の家族との違いを認識できるようになってきましたが、一昔前までは、基本的には誰もが育った家庭を「普通」と思ってしまっていました。
このように、いくら他の家族を知る機会が増えたとはいえ、機能不全家族という概念を知らない多くの人にとっては、「(他の家族について)見えていても見ていない」といったところでしょうし、まだまだ自分の家族を機能不全家族だと自覚できない環境ではあると思います。
ぜひ知識としてもっておいて欲しいと思います。
アダルトチルドレンが機能不全家族内で演じた役割
機能不全家族では、何とか家族の崩壊を免れようと、次のような役割を無意識に演じてしまうことがあります。
演じ続けてしまうことによって、それが当たり前となり、演じていたことすら忘れてしまいます。
さらに、役割を演じることによって自分を見失ってしまいます。
まずは自分がどんな役割を演じていたのかを知り、自覚していくことが大切です。
中には複数の役割を演じていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「家族英雄」(ファミリー・ヒーロー)
勉強やスポーツなどで好成績を上げることによって世間からの家族の評価を上げようとする役割。
いわゆる優等生タイプ。
自分の頑張りによって、両親の関係が良くなるのでより一層がんばってしまう。
エリートに多く親の虚栄心のために動く。
「犠牲者」(スケープゴート)
問題を起こして自分が問題者となり、家族の問題を子どもの問題へと転換させる役割。
ヒーローとは真逆。
一家の中のダメを全部背負うような子ども。
この子さえいなければすべて丸く収まるのではないかという幻想を他の家族に抱かせることによって、家族の真の崩壊を防いでいるような存在。
「いなくなった人」(ロスト・ワン)
目立たないようにして存在しないことによって家族の安定に貢献する役割。
ヒーローやスケープゴートのように目立たないで、「失われた子ども」(ロスト・チャイルド)という存在の仕方をする。
こうしたかたちで家族内の人間関係を離れ、自分の心が傷つくことを免れようとしている。
「道化者」(クラウン、マスコット、ピエロ )
家族の中で常に陽気に振る舞い、葛藤を減少させる役割。
家族の中に緊張が走るようなとき、突然とんちんかんな質問をしたり、唄い出したり踊り出したりし始める。
自分でもそれを楽しんでいるように感じるが、実は寂しい。
その場に合った感情を出すので、自分の本当の感情がわからなくなる。
「なだめ役」(プラケイター、慰め役)
家族内での仲介役、調整役。
他の家族のカウンセリングをする(親であったり年上のきょうだいのこともある)。
他の家族の情緒的なニーズに応えることに専念し、自分の痛みから目をそらす。
「支え役」(イネイブラー)
子供でありながら親に変わって世話をする役割。
親に変わって「父親の妻代わり」「母親の夫代わり」「きょうだいの親代わり」をする。
世話が行き過ぎると相手の問題点を悪化させてしまうこともある。
まさに共依存を体現している役割である。
《参考文献・引用》
『子どもを生きれば おとなになれる<インナーアダルト>の育て方』
クラウディア・ブラック 著 水澤都加佐 監訳 2003 アスク・ヒューマン・ケア
『アダルトチルドレンと共依存』
緒方明 著 1996 誠信書房
『アダルトチルドレンと家族 心の中の子どもを癒す』
斎藤学 著 1996 学陽書房
機能不全家族チェックリスト
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- 複数当てはまる方は要注意です。
☑1.教育や躾という名目で親からの理不尽な言動・行動があった
☑2.親がいると緊張して安心することがなかった
☑3.親の言動に一貫性がなかった
☑4.親の言動と表情が一致していなかった
☑5.身体的、精神的、性的な暴力があった
☑6.「我慢しなさい」という言葉で親に支配された
☑7.親の意見に反対することが許されなかった
☑8.親に意見を言うと「誰に向かって言っているんだ」「縁を切る」などと脅された
☑9.親に意見を言うと泣いて罪悪感を感じさせられたり、逃げて聞いてくれなかった
☑10.親に自分の意見が言えるような雰囲気ではなかった
☑11.喜怒哀楽を表現することが許されなかった
☑12.一緒にテレビを見ても批判ばかりで楽しめなかった
☑13.条件付きの愛情で愛され、無条件の愛がなかった
☑14.世間体を気にしすぎる親だった
☑15.親に異常な偏見があった
☑16.一般的な常識ではなく、親の常識で支配された
☑17.親が人の良いところよりも悪いところに注目する傾向にあった
☑18.親が子どもにしていることに対して全て正しいと思い、何の疑問も感じることがなかった
☑19.親からの決めつけが多く、それに従うように誘導されていた
☑20.悩み事がある時にとても親に相談しようとは思えない環境だった
☑21.子ども部屋を持つことを許されなかった(家の間取りなどの事情は除く)
☑22.子ども部屋のドアを閉めることが許されなかった(境界を持てなかった)
☑23.欲しいものを素直に欲しいと言えなかったし、言えても2番目3番目に欲しいものを表明した
☑24.他の兄弟姉妹や身近な子どもと比較された
☑25.他の特定の兄弟姉妹の方がかわいい等の発言を直接、あるいは間接的に聞かされた
☑26.親自身が機能不全家族で育てられた
これらはほとんどの場合において、子どもの頃は意識されません。
子どもにとっては、このような家庭が一般的な家庭だと思い込んでいるからです。
何かのきっかけがないとわかり得ません。
基本的に、機能不全家族では「個」が認められません。
プライバシーが認められないため、親が勝手に子どもの部屋に入り込んで詮索することもあります。
そうすることに疑いを持ちません。
こんな家ではとても安全基地にはなり得ません。
子どもがDVやモラハラを受けて離婚したくても、「離婚=恥」という考えのために「耐えなさい」「戻って来るな」という親もいます。
このような親にとって、子どもの人格は世間体よりも価値が低いものなのです。
コミュニケーションにおいても、親から子への一方向的なものとなります。
親は子どもを所有物と見なしていますが、それを自覚している親はほとんどいません。
「親は絶対に正しい」「子どもは親に従うもの」という図式で成り立っています。
暴力(DV)を受けて育った方は、暴力(DV)はどこの家庭にも普通に行われているものだ、と思い込んでいる方も多いです。
そのため、結婚や恋愛でパートナーをもった時に、加害者として暴力(DV)で解決したり、被害者として必要以上に暴力(DV)を許容してしまったりします。
加害者か被害者かのどちらか極に振れてしまい、機能不全家族の連鎖につながります。
暴力(DV)こそが愛情だと勘違いしてしまう方もいらっしゃいます。
その結果、穏やかで安定した人に対して「愛情がない」「つまらない」と判断してしまうこともあります。
愛すべき人を間違えてしまうことにつながります。
また、子どもに対しても、躾(しつけ)には暴力も必要だと思い込むことにもなり、虐待との区別がつかなくなります。
このような家庭が不健全だと知ることのできたあなたは、共依存やアダルトチルドレンの特徴を備えてしまっていることはあなたの責任ではないということがおわかりいただけたでしょうか。
少しでも自分を責めずに、罪悪感を抱かずにいて欲しいと思います。
この記事を書いた人 | |
共依存・夫婦問題カウンセラー大村祐輔 9年間で約800人、60分×約13,000回のカウンセリング実績から得た知識や経験を還元できるよう日々尽力しています。 大村の理念は「夫婦問題を解決して終わりじゃない」「離婚して終わりじゃない」「根本からの自己改革」です。 共依存で悩むあなたに「とことん付き合う」の精神で活動しています。 日本学術会議協力学術研究団体 メンタルケア学術学会認定 メンタルケア心理士 資格番号E1607030023 一般社団法人 ハッピーライフカウンセリング協会認定 離婚カウンセラー 会員番号200017 →詳しいプロフィールはこちら |