愛情表現の理解から、尊重し合える関係へ

ご相談者様のプロフィール
40代後半のご夫婦 Tさん
夫婦結婚15年目夫(IT職)、妻(事務職)
お子さん:中学2年生(男の子)、小学4年生(女の子)
『共依存克服プログラム(無期限コース)』契約
ご相談内容
奥様からのご相談
「結婚して15年、夫とはほとんど会話がありません。食事が終わるとすぐに自分の部屋にこもってしまい、雑談もありません。子どもたちの話をしようとしても『そうなんだ』『うん』としか言わず、話が続きません。夫はIT職で忙しいのはわかっていますし、夫の時間も尊重したいと思っています。でも、私は夫と二人でゆっくり話す時間、一緒に過ごす時間が欲しいのです。このまま子どもたちが巣立った後、夫婦二人きりになった時、私たちはどうなってしまうのでしょうか。夫のことは嫌いではありませんが、正直冷めているのは事実です。でも、このままでは心が持ちません。夫に『もっと話したい』と伝えても、『何を話せばいいの?』と言われてしまい、私の気持ちが伝わっていないように感じます。夫は私のことをどう思っているのでしょうか。もう愛情はないのでしょうか。」
夫からのご相談
「妻から『もっと話したい』『一緒に過ごす時間が欲しい』と言われますが、正直、何をすればいいのかわかりません。仕事で毎日頭を使っているので、家に帰ったら自分の時間が欲しいんです。妻とは同じ家に住んでいるし、食事も一緒にしているし、それで十分だと思っていました。妻が何を求めているのか、正直よくわからないんです。妻のことは大切に思っていますし、愛情もあります。でも、妻が求めていることが、どういうものなのか、どうすれば妻が満足するのか、わからないんです。妻は『夫の時間も尊重したい』と言ってくれますが、それなら今のままでいいのではないかと思ってしまいます。妻を悲しませたくはないのですが、どうすればいいのでしょうか。」
カウンセリング経過(『共依存克服プログラム(無期限コース)』契約)
Tさん夫婦は、お二人とも『共依存克服プログラム(無期限コース)』を契約され、基本的には私と夫、私と妻、それぞれ1対1でのカウンセリングを行い、5回に1回程度、私とTさん夫婦の3人での夫婦カウンセリングを挟む形で進めていきました。
初期段階(1~5回):お互いの「愛の言語」の違いを理解する
初回のカウンセリングでは、まずご主人と奥様、それぞれと個別にお話をさせていただきました。
ご主人との個別カウンセリング(第1回・第2回)では、「自分の時間の重要性」について熱心に語られました。そして、ご主人にとって、「同じ空間にいること」が愛情表現だったいうことがわかりました。
奥様との個別カウンセリング(第1回・第2回)では、神妙な様子で「寂しさと孤独感」について語られました。「夫とは同じ家に住んでいるのに、まるで他人のよう」「夫と二人でゆっくり話す時間が欲しい」とおっしゃいました。奥様は、「同じ時間を一緒に過ごすこと」を求めていたのです。
第3回のセッションでは、ご主人と奥様それぞれに「愛の言語」という概念をお伝えしました。人が愛情を感じる方法は5つのパターンに分けられること、そしてご主人と奥様では「愛の言語」が異なることを説明しました。ご主人はまだピンとこないようでした。
第5回のセッションでは、初めての夫婦カウンセリングを行いました。お二人の「愛の言語」の違いを改めて確認し、お互いが何を求めているのかを言語化していただきました。ご主人は「週に1回、2時間程度、二人でゆっくり過ごす時間を作る」という具体的な目標を設定されました。奥様は「夫の時間も尊重する。夫が自分の時間を持つことを責めない。そして、私も一人で楽しむ力をつける」という目標を設定されました。
中期段階(6~15回):実践と調整、そして新しい発見
第6回から第8回のセッションでは、ご主人との個別カウンセリングを行いました。ご主人は「週に1回、土曜日の夜、自宅で妻と二人で映画を観る」という実践を始められました。最初は「何を話せばいいのかわからない」とおっしゃっていましたが、映画であれば、そこまで心配はありません。「妻の映画の感想をちゃんと聴こう」と意識されました。
また、「例えば、会社帰りにたまにスイーツを買っていくのはどうですか?」という提案をしました。ご主人は「そういうことをすればいいんですね」と素直に受け止められました。
さらに、「部屋にこもる前に、『これから30分だけ部屋に行って良い?』と奥様に一言伝えるだけで、奥様は安心されると思いますよ」ともお伝えしました。ご主人は「そんな簡単なことでいいんですか?」と驚かれていました。
「会社帰りにスイーツを買っていったら、すごく喜んでくれた。部屋に行く前に一言伝えるだけで、妻の表情が変わった」と報告されました。そして、「スイーツ自体ももちろん嬉しいんでしょうが、自分のことを気にかけてくれていることが嬉しいんだと気づきました」とおっしゃいました。
また、「子どもにも『今日は何かいいことあった?』とたまに聞くようにしたら、上の子には『きもっ』と言われ、下の子には『お父さんどうしたの?』と言われました」と笑いながら報告されました。「でも、妻いわく、『二人とも嫌な感じはしていなかった』とのことです。いかに自分は、家族を気にかけていなかった、あるいは、気にかけていることを示していなかったことに気づきました」と今までにない柔らかな表情で語られました。
奥様との個別カウンセリングも並行して行いました。奥様は「夫が週に1回、映画に付き合ってくれるようになった」と少し照れくさそうに報告されました。ただし、「夫がまだ『義務』として映画に来ているように感じる」「もっと自然に、楽しんでほしい」ともおっしゃいました。私は奥様に、「ご主人の努力を認めること」「ご主人が変化するには時間がかかること」「焦らないこと」をお伝えしました。
また、第7回のセッションでは、奥様から興味深い報告がありました。「夫が会社帰りにスイーツを買ってきてくれるようになったんです。でも、大村さんが『例えばこういうことをしてみましょう』と例として言ってくれたことを、そのまんまやるあたりが、不器用というか、主人らしいと思えるようになりました。その素直さに惹かれたんだったと思い出しました」と笑顔で語られました。
さらに、「少しでも気にかけてもらえるようになると、夫のいろいろなことがプラスに見えるようになりました。逆に気にかけてもらえないと、すべてがマイナスに見えてしまうことに気づきました」という重要な気づきもありました。
第8回のセッションでは、奥様に「奥様自身も一人で楽しむ力をつけること」の重要性をお伝えし、「ご主人に依存しない、自分の人生を楽しむ」という視点を持っていただきました。奥様は「これまで誰かと付き合ったりすると、友人関係との連絡が途絶えてしまう傾向が自分にあったんですが、もったいなかったと思いました」とおっしゃいました。
また、「なんでもかんでも一緒にやることを求めてきたし、そうしてくれることが愛情だと思っていたけど、違ったんですね」という気づきもありました。「例えば、ショッピングモールなどで、ずっと一緒にいるのではなく、それぞれの時間を作る(別行動)のも大事と思えました。また、同じ部屋で一緒に寝るべき、と思っていたが、そうでない日があっても良いと思えました」と語られました。
第10回のセッションでは、2回目の夫婦カウンセリングを行いました。お二人の進捗を確認し、新しい課題も見えてきました。ご主人は「映画は続けているが、まだ『義務』のように感じている」と正直に話されました。奥様は「夫の努力は認めているが、もっと自然に楽しんでほしい」と伝えられました。私は、「ご主人が『義務』から『楽しみ』に変わるには、もう少し時間がかかる」こと、「奥様がご主人の変化を焦らないこと」をお伝えしました。また、「奥様が一人で楽しむ力をつけることで、ご主人へのプレッシャーが減る」こともお伝えしました。
第11回から第13回のセッションでは、ご主人との個別カウンセリングを行いました。ご主人は「映画が少しずつ楽しくなってきた」と報告されました。さらに、「大村さんが例として言ってくれたこと以外に思いつかないので、とりあえず言われたとおりにやってみたら、『それはそれであなたらしい』と言われ、笑われたんですが、うれしかったです。それくらい、行動の内容よりも、自分から能動的にやることに意味があるんだなと気づきました」とおっしゃいました。
第11回から第13回のセッションでは、奥様との個別カウンセリングも並行して行いました。奥様は「学生時代の友人と月に一度ランチをするようになった」「地域の合唱サークルに通い始めた」と報告されました。「一人で楽しむ力がついてきた」とおっしゃいました。
また、「夫との悩みを友人に話すことで、友人からも友人のご主人との悩みを話してもらえたんです。大村さんが言っていた、自分が自己開示することで自己開示が返ってくることがよくわかりました。それによって、さらに深い関係になれるとわかりました。そういった友人がいるだけで、孤独感が減り、夫への不満も減っていきました」と語られました。
さらに、「何度も夫に言っていたのに、同じことを大村さんが言ったらすんなり入っていったんです。それは腹立たしいことなんですが、そういうものなのかもしれないと思えました」と笑いながらおっしゃいました。
そして、「自分側も変われることがあったのに、夫だけのせいにしていたことにも気づけました」という重要な気づきもありました。
第15回のセッションでは、3回目の夫婦カウンセリングを行いました。お二人の変化を確認し、お互いに感謝の言葉を伝え合っていただきました。ご主人は「妻が一人でも楽しめるようになって、自分へのプレッシャーが減った」と話されました。奥様は「夫が私の話を聞いてくれるようになった」と話されました。
後期段階(16~20回):関係性の深化と今後の維持
第16回から第18回のセッションでは、ご主人との個別カウンセリングを行いました。ご主人は「映画だけでなく、家でも妻と話すようになった」と報告されました。また、「自分の時間も確保しながら、家族との時間も大切にする」というバランスが取れるようになったとのことでした。
奥様との個別カウンセリングも並行して行いました。奥様は「夫が家でも話してくれるようになった」と嬉しそうに報告されました。また、「合唱サークルで新しい友人ができた」とも報告されました。
第20回のセッションでは、4回目の夫婦カウンセリングを行い、総まとめを行いました。お二人の変化を振り返り、今後の関係性の維持方法について話し合いました。ご主人は「週に1回の映画は今後も続けたい」と話されました。奥様は「夫の時間を尊重しながら、自分の人生も楽しみたい」と話されました。
Tさん夫婦からのメッセージ
ご主人からのメッセージ
妻がどんどん暗くなっていき、ただそれだけで責められているように感じていましたが、妻が求めていたことが意外にもシンプルなことだとわかり、プレッシャーが減りました。大村さんがわかりやすく教えてくれたのが良かったです。それと、自分がいかに男性社会で生きてきたか、ということがわかりました。さらにはIT関連の職場の独特さも初めて理解しました。相手のことを理解することも大事ですが、自分のことを理解することも大事だなと思いました。
奥様からのメッセージ
カウンセリングを受けていく中で、最初は夫のことばかり話していたのが、いつの間にか少しずつ自分のことを話すようになっていたことに気づきました。正直、夫がカウンセリングを一緒に受けてくれるということ自体で、かなり嬉しかったので、あまりそれ以上は求めていなかったのですが、変わろうと努力してくれたので本当に良かったです。自分の中で、もっと大きな理想の夫像があったのですが、そこまで求めなくて良くなった自分に驚きました。どこかで身近なご主人と自分のご主人を比べていたことに気づき、かなり失礼だったなと思い直しました。自分の変化もできたのが良かったです。
カウンセラー大村が語る、夫婦関係を改善するコミュニケーションのポイント
大村カウンセラー
このケースは、夫婦でカウンセリングを受けることの意義を象徴する事例でした。Tさん夫婦の問題は、「愛情がない」わけではなく、「愛の言語の違い」によるすれ違いでした。ご主人にとっては「同じ空間にいること」が愛情表現であり、奥様にとっては「クオリティタイム(質の高い時間を一緒に過ごすこと)」が愛情表現でした。この違いを理解できたことが、大きな転機となりました。
夫婦でカウンセリングを受けることの最大のメリットは、「お互いの違いを理解し、尊重し合える関係を築ける」ことです。個別カウンセリングでは、それぞれが本音を話すことができます。夫婦カウンセリングでは、お互いの違いを確認し、具体的な目標を設定することができます。この組み合わせが、非常に効果的でした。
また、Tさん夫婦の回復プロセスで特に重要だったのは、「奥様が一人で楽しむ力をつけたこと」と「ご主人が『気にかけていることを示す』ことの大切さに気づいたこと」です。奥様が夫に依存しなくても、自分の人生を楽しめるようになったことで、ご主人へのプレッシャーが減り、ご主人も変化しやすくなりました。一方、ご主人は「部屋に行く前に一言伝える」「スイーツを買っていく」「子どもに声をかける」といった小さな行動が、家族に安心感を与えることに気づかれました。
興味深かったのは、奥様が「何度も夫に言っていたのに、同じことを大村さんが言ったらすんなり入っていった。それは腹立たしいことだが、そういうものなのかもしれない」とおっしゃったことです。これは、夫婦間のコミュニケーションにおいて、第三者(カウンセラー)の介入が有効であることを示しています。また、ご主人が「言われたとおりにやってみたら、『それはそれであなたらしい』と言われた」というエピソードも印象的でした。行動の内容よりも、「自分から能動的にやること」に意味があるという気づきは、今後の夫婦関係の維持に大きく貢献するでしょう。
このケースが示すように、夫婦の問題は「どちらが悪い」という話ではありません。お互いの違いを理解し、尊重し合い、そして共に成長することが、健全な夫婦関係の鍵となります。Tさん夫婦の勇気ある取り組みが、同じ悩みを抱える方々の希望になることを願っています。
Tさん夫婦のその後
カウンセリング終了後、半年に一度、近況報告をいただいています。週に1回の映画は今も続いており、「映画の時間が二人の大切な時間になっている」とのことです。奥様は合唱サークルで新しい友人ができ、月に一度、友人たちと旅行に行くこともあるそうです。ご主人は自分の時間も確保しながら、家族との時間も大切にしているとのことです。子どもたちも両親の変化を喜んでおり、家庭の雰囲気は良好とのことです。「理想の夫婦関係までいったわけではありませんが、お互いを尊重し合える関係を築けたことが、何よりも嬉しい」とおっしゃっていました。
よくある質問(FAQ)
Q1.夫婦でカウンセリングを受けるには、どちらも無期限コースを契約する必要がありますか?
A.いいえ、必須ではありません。ただし、継続的な変化のためには無期限コースをお勧めします。Tさん夫婦のように、お二人とも無期限コースを契約される方が約7割です。残りの3割は、どちらか一方が無期限コース、もう一方が基本料金(単発)という形です。ただし、夫婦関係の改善には時間がかかることが多いため、お二人とも無期限コースを契約されることをお勧めします。「あと何回で終わり」という焦りがなく、じっくりと問題に向き合うことができるからです。
Q2.夫婦カウンセリング(3人で行うカウンセリング)は毎回行うのですか?
A.いいえ、必須ではありません。状況に応じて行います。Tさん夫婦の場合は、5回に1回程度、夫婦カウンセリングを挟みました。基本的には、私とご主人、私と奥様、それぞれ1対1でのカウンセリングを行い、必要に応じて夫婦カウンセリングを行います。夫婦カウンセリングを闇雲に行うことで、関係性が悪化することもあります(もちろん私がそうならないようします)。「弁が立つ側が優位になる」「本心を言いにくい」などのデメリットがあるからです。そのため、慎重に、そして状況に応じて行います。
Q3.個別カウンセリングで話した内容は、相手に伝わりますか?
A.基本的には、ご本人の許可なく相手に伝えることはありません。個人情報は守ります。私が勝手に相手に情報を伝えることはなく、それぞれに確認しながら行っていきます。ただし、ほとんどの方は、基本的にはお互いにかなりオープンです。「これは相手に言わないでください、と言わない限りはすべて相手に伝えて良いです」とおっしゃるご夫婦が多いです。そうでないと夫婦でカウンセリングを受ける意味がないと理解してくださっているからです。
Q4.カウンセリング20回は、どのくらいの期間がかかりますか?
A.約8ヶ月間です。Tさん夫婦の場合、週に1回のペースでカウンセリングを行い、約8ヶ月間で20回のセッションを完了しました。ただし、ペースはご夫婦の状況に応じて調整できます。2週間に1回のペースで進める方もいらっしゃいます。Tさん夫婦の場合は、半年に一度、近況報告をいただいています。








