夫婦共依存の特徴と原因:離れられない関係の心理メカニズム
共依存夫婦の根本原因と健全な関係を築くためのステップ
長年カウンセラーとして多くの夫婦の問題と向き合ってきましたが、その根底に共依存が隠れているケースは非常に多いと感じています。
この関係は、夫婦お互いが自立できていないことによる、まさに悲劇と言えるものです。
しかし、共依存だと気づいたからといって、すべてが終わったわけではありません。
がっかりする必要は全くありません。
共依存を自覚し、そのメカニズムを理解することこそが、健全な夫婦関係を再構築するための大きな一歩となります。
「どう考えても離婚した方が良い、別れた方が良い」と頭ではわかっていても、どうしても離れられない。
もしあなたが今、そんな苦しい関係性の只中にいるのなら、それは共依存関係かもしれません。
夫婦がお互いに支え合って生きていくことは、本来とても素晴らしいことです。
しかし、その支え合いが過度になり、不健全なものへと変わると、お互いの心が壊れていきます。
共依存に陥る夫婦は、両方が人との距離感が取りづらかったり、適切な境界線を引くことが苦手であるケースがほとんどです。
たとえ夫婦のどちらか一方だけでも、バランスは簡単に崩れてしまいます。
共依存やアダルトチルドレンの特徴を少しでも改善することで、夫婦の関係性を整えることができるのです。
まずは、あなたの夫婦関係に共依存の兆候がないか、一緒にチェックしていきましょう。
モラハラを受けて離れたいと思っていても、経済的・精神的に自立できていないことにより、離婚への勇気が持てない。
アルコール依存症やギャンブル依存症のパートナー(夫や妻)をなんとかしてやりたいと思いつい援助してしまう。
浮気(不倫)をされて恨みつらみがあるけども、特に何かできることがない。
いろいろと理由があると思いますが、まず共依存夫婦の特徴を見ていきましょう。
共依存夫婦が抱える7つの特徴と悲劇的な結末
共依存に陥っている夫婦には、以下のような特徴が見られます。
これらは単なる個人的な問題ではなく、夫婦という関係性の中で悲劇的な結果を引き起こす原因となります。
1. 相手に対する過保護と支配
共依存の関係では、相手に尽くしすぎたり、相手をコントロールしようとする傾向が顕著です。
常に相手の一挙手一投足が気になり、先回りしてやってしまうことはありませんか?
これを続けていくと、相手はあなたが当然のように尽くしてくれると思い込み、自立した人間としての成長が止まってしまいます。
そう考えると、「パートナーの依存心やモラハラをを自分が引き出しているかもしれない」という視点も出てきます。
あなたは「私はこんなに尽くしているのに!」と不満を感じ、相手は「なぜ勝手にやって、あとから文句を言うんだ」と反発する。
お互いにとって良いことは何一つありません。
脳は不思議なもので、「嫌いなはずの相手に尽くしているのだから、私は相手を好きなんだ」と誤解し、愛情と執着を混同させてしまうことがあります。
一度尽くすことをやめてみると、自分の本当の気持ちに気づくかもしれません。
2.相手が自分に依存してくれることに安心する
「私がいないとこの人は生きていけない」という思いが、あなたの行動の根底にありませんか?
パートナーがあなたに依存してくれることに、どこかで安堵感を覚えていないでしょうか。
なんなら、望んでいないでしょうか?
この感情の裏側には「見捨てられ不安」が潜んでいることが多いです。
パートナーが自分から離れないように、無意識のうちに世話を焼き続けているのです。
これは、相手が成長する機会を奪うだけでなく、「自分は必要とされている」という歪んだ安心感を求める不健全な動機となります。
3. 相手への過干渉と束縛
共依存の夫婦は、お互いのプライベートな時間や空間を尊重することができません。
相手の行動を細かく把握しようとしたり、相手の友人関係にまで口出しをしてしまうといった過干渉が見られます。
相手からすれば、これは明らかな束縛です。
健全な人間関係では、誰しもが一人で過ごす時間や、友人との時間を必要とします。
旅行に行く、本を読む、友人とカフェでおしゃべりをする。
これらは人生を豊かにするための大切な時間です。
しかし共依存の関係では、こうした時間が許されず、いつの間にか夫婦間のすれ違いを生み出してしまうのです。
4. 著しく強い被害者意識(認知のゆがみ)
あなたは「私はこんなに一生懸命仕事をしているのに」「私ばかり家事や育児をしているのに」と、パートナーに対して不満を抱えていませんか?
しかし、それは本当に客観的な事実でしょうか。
もしかしたら、あなたは被害者意識や認知のゆがみによって、ネガティブな意味付けをしているだけかもしれません。
パートナーの行動一つ一つに「どうせ何もやってくれていない」というフィルターをかけて見てしまうと、感謝すべき点や良い面が見えなくなってしまいます。
これは「白か黒か」「0か100か」という極端な思考パターンであり、自らパートナーへの不満を作り出していると言っても過言ではありません。
あなたのネガティブな解釈が続けば、パートナーは楽しいことや嬉しいことがあってもあなたに話してくれなくなり、やがて関係は冷え込んでいくでしょう。
5. 一心同体感が強く、個の尊重ができない
健全な夫婦関係は、お互いが自立した個人として尊重し合うことで成り立ちます。
しかし、共依存の関係では「夫婦は一心同体でなければならない」という考えが強く、相手の個性を認められません。
自己肯定感が低いと、「パートナーが自分の時間を持つこと=自分のことを軽視している」と捉えてしまいます。
さらに深刻な場合は、「裏切られた」「相手は(悪い意味で)変わってしまった」と被害妄想に陥ることもあります。
不健全な家庭で育った人は、健全な境界線を「裏切り」だと感じてしまう傾向があり、パートナーとしてはたまったものではありません。
「自分は相手がいないと生きていけない」という状態を脱し、「一人でも幸せな自分」を作ることが重要です。
6. 常に誰かと一緒にいないと不安になる
共依存の関係を加速させる最大の要因の一つが、この「一人でいられない」という心理です。
一人になること、孤独になることへの強い恐怖があるため、モラハラやDVを受けても「一人になるよりはマシだ」という思いが優先されてしまいます。
「一人でも人生を楽しめるけど、二人でいたらもっと楽しい」という状態こそが、健全な夫婦関係の理想です。
7. 決断ができない、責任が取れない
夫婦間で何かを決める際に、お互いが「なんでも良いよ」「任せるよ」と決断を避け、責任を押し付け合っていませんか?
これは、一見すると円満なように見えますが、実は「自分で決めていない」という負の感情が蓄積されていく危険な行為です。
詳しくは下に記載しています。
共依存夫婦が形成される原因
上で記載した特徴はそのまま原因と言い換えても良いと思います。
「自己肯定感が低い」
「被害者意識が強い(「認知のゆがみ」が激しい)」
「自分一人でいられない」
等がそうですね。
それぞれの原因が絡み合って共依存を形成していることがわかると思います。
1.低い自己肯定感からくる他者依存
自己肯定感が低いと、そのままの自分でいることができず、どうしたらパートナーに見捨てられないようにいられるか、何をすれば自分はパートナーに認められるのか、ということばかり考えるようになり、他者優先になります。
自分がパートナーから嫌われてしまうことを恐れるあまり、結果として、パートナーのニーズを観察しているようで観察できていない、ということも起こり得ます。
望まれていないことを望まれていると勘違いして行動してしまう、ということです。
恩着せがましくなり、「なぜ感謝してくれないのか」と一人不満を抱えることになります。
良い反応を得られないのは「自分のやり方が悪いんだ」「我慢が足りないんだ」と思ってしまうと良い反応を得られるまで続けてしまうことにもなります。
「自分はいつも相手のことを考えている」と自信を持って言う方も、本当に相手のことを正しく考えられているかというと実はあやしいです。
ある意味で自己中心的であり、ここに気付いて認めることができないと、安定した夫婦関係を築くことはできません。
2.強い被害者意識による思考のゆがみ
被害者意識が強いと、パートナーの言動や行動の意図を読み違えてしまい、何事も自分への批判や攻撃と受け取ってしまい、さらに自己肯定感が低くなるという悪循環に陥ります。
パートナーがただ事実を伝えているだけなのに批判や攻撃と受け取ってしまう方も多くいます。
自分の思考パターンや行動パターンをまず知ることが必要不可欠です。
まず知ること、についても相手よりも自分が先です。
3.自分一人でいられない
自分一人でいられないということは、何よりも共依存関係を加速させます。
モラハラやDVを受けても、一人になって孤独になるよりもマシだという思いが優先されてしまうからです。
繰り返しますが、「一人でも人生を楽しめるけど、二人でいたらもっと楽しめるよね」
という状態がベターです。
その他にどんな原因が絡み合っているのかを記載していきます。
4.責任を避ける「決断回避」の習慣
それだけ自己肯定感が低いと言えると思います。
何かを決める際に決断や責任を押し付け合う夫婦が散見されます。
特に離婚に関しても「もう離婚だ!」と声を荒げる割に自分で行動に移さず、相手が動いてくれるのを待つ、という人がいますが、それは依存です。
ちなみに「断る」というのも、いろいろな選択肢の中から不要なものを切り捨てる、という意味で決断と言えますので、「断れない」というのは「決断できない」ということになります。
「断ったら嫌われてしまう」という見捨てられ不安が根底にあります。
5.意見が言えない
自分の意見を言うことに怖さを感じている、あるいは罪悪感すら覚えるという人がいますが、自分の意見を言うことは普通です。
意見を言うという当たり前のことを否定するような人とは関わってはいけません。
決断ができないということにもつながってきます。
夫婦問題というのは決断の連続ですから、お互いがそれぞれに依存していれば何も進みません。
モラハラ加害者については、一見意見を言えているように見えますが、相手の意見を聞くことを避けるために一方的に言い負かすという意味で、自信がないと言えます。
そういう意味では意見を言うことすらせず暴力で解決しようとするDV加害者は論外ということになります。
モラハラの中でも「無視」という行為がありますが、これも同じく相手の意見を聞くことへの回避、と言えます。
このようなモラハラやDVがあったとしても、それに対して抵抗できずに我慢してしまう側も問題です。
このような共依存の夫婦関係を子どもに見せてしまうと、(両親が示した)共依存関係が人間関係を構築する際のモデルになります。
そういった連鎖の問題も頭に入れておきましょう。
夫婦共依存を克服するためにできること
共依存夫婦であることを自覚し、認めること
まずは当然ながら自分たち夫婦が共依存関係にあることを自覚することが大事です。
そして認めることです。
どちらか一方だけが自覚して認めるだけでは克服は難しいです。
問題から逃げていては問題は深まるばかりです。
そして、共依存について書かれているもの(私のHPやブログ他様々な書籍やネット情報)について、自分のこととして読むことです。
お客様を見ていて思うのは、「これ夫(妻)に当てはまるな」というように相手を想定して読んでいる方が多いなということです。
相手を変えようとするために読むのではなく、自分のために読んでください。
それぞれが自分のために読むことが克服の条件となります。
言い換えると、
それぞれが自身の共依存やアダルトチルドレンの特徴を克服すること、
と言えます。
自分の意見を持つこと、表現すること
あなたはパートナーと何かを決断する時に、
「なんでも良いよ」
「どちらでも良いよ」
「好きにして良いよ」
が口癖になっていませんか?
パートナー任せにすることで責任から逃れることができます。
仮に失敗した場合でも、パートナーを信頼して決めてもらったことですから責めることができません。
「信頼しているのでパートナーが決めたことであれば文句はありません」と言い、意識の上で100%「OK!」と感じていても、実は無意識下では負の感情が蓄積してしまうものです。
一見夫婦の信頼関係が構築されているように見えますが、実はそれは「依存」であり、さらにはあなたの自己肯定感を下げる考え方でもあるのです。
意見を言わないにしても、少なくとも自分の意見を考えることから始めましょう。
あなたは自分で決定(決断)できているでしょうか?
「なんでも良いよ」が自己肯定感を下げる!? | |
負の感情と書きましたが、どんな感情かというと、「自分で決めていない」という感情です。
しかも無意識下(心理学的には潜在意識)で蓄積されます。
さらには自分では気がつかないうちに、負の感情をパートナーへの不満にすり替えています。 これを私は「身勝手な感情のすり替え」と呼んでいます。 パートナー任せにしておきながら、勝手にパートナーへの不満を溜め込んでいるのです。
自分の意見を何も持たずにパートナーが決断したということは、その決断が自分にとって良い結果であれ悪い結果であれ、自己肯定感を下げることになります。 パートナーに決定してもらったこと自体が自己肯定感を下げる原因となるのではなく、自分の意見を何も持たずに完全にパートナー任せにした場合に、自己肯定感を下げる原因となります。 行動が最大の暗示、とよく言われますが、「自分の意見を持たずにパートナー任せにした」=「自分は意見を持てない人だ」「自分は意見を言えない人だ」という暗示になってしまうのです。
これを防ぐには、最終的にパートナーが決定することになったとしても、自分の意見を言うことです。 言えないにしても、必ず自分の意見を頭の中だけで最低出しておくことです。 結果(パートナーが決める、パートナーの意見が採用される)は問題ではなく、ちゃんと自分の意見を言えたか、あるいは持てたか、が大事なのです。 |
一人で居られるようにする・他の自分の居場所を作る
一人で居られるようにとはいかないまでも、他に自分の居場所を作ってください。
居場所というのは職場でも構いません。
働くということはお金を稼ぐだけが目的ではありません。
狭くなっていた視野を広くすることや他人の家庭について知る機会にもなります。
ブランクがある方は自信を取り戻す機会にもなります。
習い事でも構いません。
これについても、習得することだけが目的ではなく、そこで出会う人間関係によって他人の価値観に触れるということも目的の一つです。
結婚して仕事や習い事等で外の世界に触れる機会が減った方であっても、結婚前は積極的に触れる機会を作っていたという方は多いです。
今現実的に外の世界に触れることができないという方は、ぜひ結婚前の自分と結婚前の生活を思い出していただきたいと思います。
それだけで、今の自分がいかに狭い世界で生きているかに気が付けるはずです。
夫婦カウンセリングを受ける
どうしても克服が難しいということであれば、夫婦カウンセリングをおすすめします。
一度心がすれ違い、信頼関係が崩れると、相手の発言をネガティブに捉えがちです。
ありのまま見聞きすることができません。
ねじ曲げて解釈してしまうものです。
お互いがお互いに対してどんなに正しいことを言ってもその正しさは無力です。
それはあまりにももったいないことです。
二人の言語を翻訳するお手伝いをいたします。
もちろん私でなくても構いませんが、「あなたが男らしくないから(女らしくないから)いけないのよ」等といった非建設的なアドバイスをするようなカウンセラーはおすすめしません。
この記事を書いた人 | |
共依存・夫婦問題カウンセラー大村祐輔 9年間で約800人、60分×約13,000回のカウンセリング実績から得た知識や経験を還元できるよう日々尽力しています。 大村の理念は「夫婦問題を解決して終わりじゃない」「離婚して終わりじゃない」「根本からの自己改革」です。 共依存で悩むあなたに「とことん付き合う」の精神で活動しています。 日本学術会議協力学術研究団体 メンタルケア学術学会認定 メンタルケア心理士 資格番号E1607030023 一般社団法人 ハッピーライフカウンセリング協会認定 離婚カウンセラー 会員番号200017 →詳しいプロフィールはこちら |